東京地方裁判所 昭和41年(ワ)6425号 判決
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〔判決要旨〕窓および凹段部を有し、装飾枠主体を形成した構造を有する点で共通する壁掛であつても、抜孔が専ら装飾用で掛着に用いられず、かつ鏡板を用いたため食卓等に横置して敷台に兼用することのできないものは、掛着用孔を有し、かつ食卓等に横置して、薬缶、土瓶等敷台に兼用することができる壁掛兼用敷台の実用新案の技術的範囲に属さない。
〔判決理由〕
一、請求原因第一項および第二項の事実は、当事者間に争いがない。
二、そこで、被告らの製品(乙)が本件実用新案(甲)の構造を備えているかどうかについて検討する。
(一) まず、乙が、窓1および凹段部2を有する装飾枠主体3を形成した構造を有する点で甲と共通することは明らかであるが、(1)甲では、装飾枠主体3の裏面に設けた脚片がその四側にあるのに対し、乙では三側にあるにすぎない点、(2)甲では、枠主体3の上下に掛着用孔5、6を有する装飾片7、8を一体に形成しているのに対し、乙では枠主体3の周囲および片方に抜孔5、6を有するバンジョー形様の装飾片7、8を一体に形成している点、(3)甲では凹段部2に嵌着したものが適宜の図形、文字等を焼付印刷した化粧陶器板9であるのに対し、乙では、化粧鏡板9である点、(4)甲が壁掛兼用敷台であるのに対し、乙は壁掛である点で相違する。
(二) ところで、成立に争いのない甲第一号証(本件実用新案公報)によれば、本件実用新案(甲)は、壁掛兼用敷台の構造をその対象とするものであり、この敷台を壁掛として使用するときには、枠主体3の上下に設けられた掛着用孔5又は6を利用して壁等に打着した釘等に掛着するという作用効果を有することが認められる。従つて、甲の孔5、6は壁等に打着した釘等に掛着できるように意識的に設けられた掛着用孔であることが明らかである。これに反して、乙は壁掛であつて、全体としてバンジョー形を呈し、その抜孔5、6は別紙目録の図面に明らかなように、バンジョー形様の装飾片7、8に模様をつけるために彫り抜いた孔であつて、抜孔5は不規則で不同の空間を作り抜孔6は角形の空間を作つており、特に掛着に使用するようその形状を配慮した形跡は認められない。のみならず、抜孔5、6には紐10が掛渡されているところからみると、紐10が掛着の作用を営むことが明らかであるから、乙の抜孔56は専ら装飾用のものであつて、掛着用のものではないといつても過言ではあるまい。従つて、乙の抜孔56は本件考案の掛着用孔56には該当しないものといわなければならない。
(三) 次に、前記甲第一号証によれば、甲では、凹段部2に嵌着した化粧器板9が適宜の図形、文字等を焼付印刷してあるため、装飾枠主体3およびその上下に設けられた装飾片7、8とあいまつて「全体として極めて美麗で、趣味的或は宣伝広告用として洵に好適で」あること、これを「食卓等に横置すれば化粧陶器板9部は薬缶、土瓶等の敷台となり板9が陶器製なるが故に熱が他部に影響することが尠く且清拭も容易で」ある等の作用効果を有することが認められる。これに反して、乙では、化粧陶器板の部分に鏡板を用いているため、これを食卓等に横置した場合、前記の効果は到底期待し得ないものというべきである。従つて、乙の化粧鏡板9は甲の化粧陶器板と同様のものといえないのみならず、その均等物とすらいえない。原告の主張は採用できない。
(四) 以上の説明よりすれば、乙はもともと壁掛であつて、これを敷台として使用することは通常の用法として考えられないというべきである。従つて、乙はこれを敷台兼用壁掛とみることすら無理であるから、甲と大きく相違するものといわなければならない。(古関敏正 水田耕一 野沢明)